其れはなにかと 問はれましたら
あさつゆであると答へます
あたら時を過したままの
ゆるんだ蔦の絡む屋根
その葉の先にうつそりと
集まる滴と答へます
──「問はれて」より
炎に包まれて
女は笑つてゐた
灼熱の風を浴び
肌を糜爛させて尚
いつそ清々しいほどに
女は笑つてゐたのだ
──「母」より
立花潮詩集
「辺獄に花立つ」より
赤い河のほとり
辺獄の水辺に
たたずむ花があるといふ
ぬかるみの泥濘に根を張り
汚泥の露に身を汚し
逆立つた脳のやうに
花びらを燃やして
ただ天を仰ぐやうに
咲いてゐるといふ
──「辺獄に花立つ」より
世界の果の砂原に
ひとつの軀が朽ちてゐる
結跏趺坐の首垂れ
ひとつの軀が朽ちてゐる
──「夜の在り処」より
大正時代の詩人・立花潮を研究する文学者、森貴彦。ある日 「辺獄」 に迷い込んだ彼は、人ならざるもの・松月の導きによって、ひとつの真実にたどりつく。
これまで男性だと思われていた立花潮は、実は女性だったのだ ──
大正時代に生きた女性、斉藤潮。
創作の世界で奔放に生きた男性、立花潮。
現実と創作、二つの世界に生きた二人の潮。
大正時代の斉藤潮(女性)は──
紡績工場で働きながら、ただ自分のために詩を綴る潮。
家事のできない潮は、姑のタツから本を読むことも詩作も否定され、「家も守れない出来そこない」と責められる。他の人にできることが自分にはできないという生きづらさの中で、やがて潮は〝自分が男性であったなら〟もっと自由に生き、自由に詩を書けたのだろうかと夢想する。
そして女性の声が及ばない時代の中で、白舟雪路や折川千枝子らによって創刊された文芸雑誌『青嵐』と女性解放運動。潮の詩を『青嵐』のために使おうと考えた折川千枝子によって、旧姓「立花潮」の名前で詩が発表されることになる。これが、後世に伝わる正体不明の詩人・立花潮の作品となって残されたのだ。
創作の世界の立花潮(男性)は──
この世界は、後世の森貴彦が想像していた「詩人・立花潮」の世界であり、女性の「斉藤潮」が思い描いた世界であり、どこかに存在していたかもしれないもうひとつの世界。
男性の立花潮は、辰巳芸者であった姉・祥子と暮らしながら、編集者で友人の榎本譲一郎によって詩の才能を見出される。譲一郎に厳しく励まされながらも、自由奔放に生き、詩を書く潮。
しかし、時代の中で潮もまた翻弄されてゆく。新人作家の時任祐市から向けられる、羨望と嫉妬。関東大震災。脳に抱えた疾患。自分の意思に反して書くことを求められ続ける重責。
やがて潮は、〝自分が女性であったなら〟苦しむことなく生きられたのかと問いかける。
ふたつの世界を繋ぐ、生まれなかった潮の妹・ミヨ。
やがて別々の世界であったはずのふたつの世界は、
ひとつの魂へとつながっていく。
華やかなりし大正時代。 それは、未来への希望と過去の傷がひずみとなって生み出した、光と影の時代。
いまだぬかるむ泥の中に、それでも花と立つ人々を描き出す、オリジナルミュージカル。
2023年に上演した同作品を、さらにスケールアップしてお届けする20周年記念公演。
観劇のご案内
■ 上演スケジュール
12月13日(金) 18:00
12月14日(土) 13:00 / 18:00
12月15日(日) 13:00
ロビー開場: 各回45分前
客席開場: 各回30分前
上演時間: 全2幕 約3時間15分予定 (休憩15分)
■ 観劇チケット 【全席指定/事前支払い】
SS席 10,000 円 – 最前列 / 舞台正面席
センター席 7,000 円 – 舞台正面席
ウイング席 5,000 円 – 舞台左右席
20周年記念席 2,000円 – 客席後方席
ご予約受付
※ ファンクラブ先行予約 10/15(火)22時~10/19(土)24時
※ 一般予約 10/21(月) 22時開始
こりっち 郵送料/お振込みについて
※ 同一名義かつ同一住所の方は【郵送料は1件分のみ】お振込みください(まとめて発送となります)
※ 複数回をお申し込みの場合、同一名義であれば【1回にまとめてのお振込み】も可能です
※ 振込手数料はお客様のご負担となります
注意事項
※ 公演中止の場合を除き、払い戻しはできません
※ 各種手数料が必要となります
※ 未就学児はご入場いただけません
※ 先行予約でご予約いただける席は【SS席/センター席/ウイング席】の3種類のみとなります
お問い合わせ(観劇予約)
yoyaku1@seabose.co.jp 担当:川井(SEABOSE)
オンライン配信
■ 配信チケット
➊ 一般 3,000 円 - 舞台映像のみ
➋ 応援 5,000 円 - ➊ + おまけ映像
➌ プレミアム 10,000 円 - ➊➋ + 特別映像付き
配信期間
※ 2024年12月24日(火)~2025年1月31日(金)
注意事項
※ ご視聴になる【人数分】お申込み下さい
※ ライブ配信ではありませんのでご了承ください
※ 期間中は何度でもご視聴いただけます
※ 劇団記録用 【固定映像】 となります
お問い合わせ(オンライン配信)
monomusica.info@gmail.com 劇団運営部
脚本・演出・詩 ヤマケイ
作曲・ピアノ演奏(収録) 橋本かおる
編曲 石黒秀/ハラヨシヒロ/山下永眞
舞台監督 HiRoE
照明 加島茜(合同会社 en haut)
音響プラン 井出三知夫
音響 吉田望(ORANGE COYOTE)/
角丸雄亮(DISCOLOR Company)
美術 松澤貴代
衣裳 佐久間のぞみ
振付 マナ/雪乃/ジュン
音楽監督 みき
小道具 まなむ
メイキング映像 池田涼(415)
舞台写真撮影 粕谷沙織(かすや舞台記録)
制作 川井麻貴(SEABOSE)
ヤマケイ 劇団代表・脚本・演出
埼玉県出身。5月20日生まれ。
埼玉県立川越女子高等学校を卒業後、東京藝術大学音楽学部に入学。
大学入学後、Mono-Musicaを結成。これまで全公演の脚本と、ほぼすべての演出を手掛ける。
卓上辞書を持ち歩くほどの日本語好きが高じ、幼い頃から物語を書くことに興味を持つ。
橋本かおる 作曲・編曲・ピアノ演奏
東京都出身。8月13日生まれ。
東京藝術大学大学院修了。
2009年「CLOWN's CROWN」よりMono-Musicaに参加。以降現在に至るまで、多数の楽曲を提供している。
緻密にしてスケールの大きな楽曲構成は、専門家からの評価も高く、劇団の作風に大きな変革をもたらした。
コンサートや公演でピアノを演奏することもあり、ピアニストとしても観客の支持を集めている。